私好みの新刊 2022年11月
『石は元素の案内人』(たくさんのふしぎ 8月) 田中陵二/文・写真 福音館書店
「すべてのものは原子でできている」は、古代ギリシャの時代から語られてきた。
当然石も原子で出来ている。石はいくつかの鉱物で作られているので、石の元である
鉱物それぞれが原子の塊である。この本は各鉱物の元素(原子)を〈案内人〉としてさ
まざまな鉱物を紹介している。はじめに〈すべてのものは原素でできている〉という
一般的な解説をしてまず手始めに〈塩・鉱物の世界へ〉から始まる。塩は鉱物の一つで
〈結晶〉の話が出る。鉱物の特徴はその鉱物独自の結晶を作ることである。岩塩をくだ
いてみると・・どこまで細かく割っても同じ形に割れる。これは結晶の特徴だ。次に、
岩塩の出来る経過について説明があり、〈岩塩のいろいろ〉の紹介がある。混ざりもの
によって岩塩に色が付く。写真がきれい。次に、いろいろな鉱物とその鉱物特有の結晶
が紹介される。水晶、白雲母、ざくろ石等紹介されている。つぎに結晶が生まれる土台
について解説がある。水晶を例に、結晶が出来るには〈のびのびと育つすきま〉が必要
と説く。次に、原子と元素の違いを説いたり、二酸化ケイ素と塩、鉄の原子構造の絵が
出る。二酸化ケイ素はケイ素と酸素がどんどんつながっていく (酸素の大きさに対して
ケイ素は小さいのだがこの図は逆) のに対して、鉄や塩の結晶は正方形型。次に地球の
内部構造や隕石の話が出る。地球の核は隕鉄と同じだろうか。続いて、「自然の中から
元素を集める」と題して、砂鉄の話が出る。砂鉄から鉄をつくる方法が紹介されているが
うまくできるだろうか。銅を取り出す方法とかヨウ素を取り出す方法が紹されている。
ここで、再び岩塩を割る場面が出る。なんどもなんども割っていくと微小に。電子顕
微鏡でのぞいた結晶の絵が紹介されている。動画でも見れる。
最後の頁に、鉱物の実体を絵にした周期律表が付けられている。2022年8 月
700円
『へんしん すがたをかえるいもむし』 桃山鈴子/作 井上大成/解説・監修 福音館書店
著者の桃由鈴子さんは〈昆虫画家〉とある。いろんな昆虫を絵筆で表現されている特異
な画家である。その桃山さんが〈すがたをかえるイモムシ〉に挑戦された。科学読み物と
言うよりビジュアル系の本であるが、淡い色合いがなんとなくリアルに感じる。小さい
子どもたちの夢を誘うのではないか。
最初に、なのはなの葉っぱのうらに着く卵が大きく描かれている。「おや? たまごの
いろが かわってきた」とある。卵の色の移り変わりが見事に見える。次に、イモムシは
卵から出てきてやがて脱皮する。皮を脱ぐ様はなかなかリアルに描かれている。こうして
イモムシの幼虫はゆっくりと皮をぬいでゆくのだろうか。やがてイモムシは大きくなって
堂々としたイモムシに成長した。こんどは茎に登って体を糸でつなぐ。しばらくすると背
中が割れてくる。サナギへの変身だ。サナギになると体がすけて見える。美しいサナギの
姿だ。しばらくすると、「ぱりっ」と背中が割れてくる。割れた背中から羽根が見えてくる。
成虫の誕生である。見開きぺージに描かれたどうどうたるモンシロチョウ。白いチョウと
はいうものの
はねの色は微妙に色が違っている。羽には灰色っぽい点々もある。こんどはサンショウ
の葉に小さな卵が見える絵。やがて産みつけられた卵は大きくなって色が変わり始める。
黒い生き物が見える。黒いイモムシの誕生だ。りっぱなイモムシに変身した姿がより大きく
リアルに描かれている。また木に登る。イモムシの姿もよく見ると気門も見える。羽化した
成虫はナミアゲハだ。次は、クズのつぼみに着く白い卵、出てきたイモムシはちょっと赤っ
ぽい。変身するたびに色が変わる変わりもの。さなぎから出てくるのはウラギンシジミ。
いろんななへんしんが楽しめる。最後に井上さんの解説がある。
2022年4月 1,540 円
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